「家族の大事さ尊さ、気づかせてくれた」…志田未来インタビュー

　映画「母べえ」（山田洋次監督、２６日公開）で主演の吉永小百合（６２）演じる“母べえ”の娘を好演している売れっ子女優・志田未来（１４）が、スポーツ報知のインタビューに応じた。出産する中学生を演じたドラマ「１４才の母」で一躍有名になって以降、大役続きで多忙な日が続く。４月からは高校受験も控える中学３年生になる。伸び盛りの少女はどんな“未来”を描いているのだろうか―。

　「人見知りですが、話すと仲良くなれます」。伏し目がちであどけない表情を見せる一方で、はきはきとした口調や話し相手をまっすぐ見つめる大きな瞳は芯の強さ、女優としてのプロ意識の高さを感じさせる。

　「母べえ」では吉永演じる“母べえ”の２人娘の長女“初べえ”を演じた。撮影が始まると吉永の演技にくぎ付けになり、大先輩のすごさを感じた。女優という仕事を改めて見つめ直す時間でもあった。「（吉永は）セリフがないシーンでも表情ひとつで心境が伝わってきて、すごい」。緊張をほぐそうと積極的に話しかけてくれる吉永から、細やかな気配り、コミュニケーションの大切さも学んだ。

　山田監督から一貫して言われたのは「色気のある声を出して」。色気？　１４歳の少女は戸惑いながらもこう解釈した。「最近の女の子は語尾が上がったり早口で昔の子供とは全然話し方が違う。落ち着いた声を心掛けました」

　演出は細部まで徹底しており、しょうゆさしの持ち方も指導された。海水浴のシーンでは「遊んでいるように見えない」とダメ出しされた。「厳しい監督でしたが、自分に良い方に指導していただいた。大人になって違う考え方ができるようになったら“山田学校”に再入学したいです」。演者としての成長ぶりを監督に見てもらいたい気持ちがある。

　母親に勧められこの世界に入ったのは６歳の時。芝居の魅力、楽しさに目覚めたのは３年前。ＮＨＫドラマ「ハルとナツ」（０５年）だった。「感情の入れ方を教わり、初めて自然に泣けました」。４月に中学３年生になる。高校受験も控える。「仕事との両立は全然苦じゃない」と言い切る。「楽しい友達ばかり。学校が素の私に一番近いかも。『テレビの未来は未来じゃない』と言われます。素顔は明るく元気な普通の子ですよ」

　「未来」という名は本名だ。「この子にあげられるものは何だろう」そう母親が考えてつけたのがこの名前だった。とても気に入っている。

　少女の出産までの葛藤（かっとう）を描いた「１４才の母」「母べえ」はそれまで当たり前のようにあると思っていた家族の大事さ、尊さに気づかせてくれた。「今は（多くの）家族があまり話をしませんよね。私は夜、布団の中でお母さんと１時間くらい話すんです。学校のこと、友達のこと。それがすごく楽しみで」

　十代半ばにして演じる自分を冷静に見つめる目を持っている。志田のすごさはここにある。「普段やらないことを演じられるのがお芝居の面白さ。似た性格の役でも、自分を完ぺきに消して全然違うように見せたい。自分にしかできない表現があると思うし、これから先、それを見つけたい」「未来」に向かってしっかり歩んでいる。

　◆志田　未来（しだ・みらい）１９９３年５月１０日、神奈川生まれ。１４歳。２０００年にドラマデビューし、０５年の日テレ系「女王の教室」で冷酷教師に唯一、抵抗する小学生役で話題に。映画は「春の雪」（０５年）、「椿山課長の七日間」（０６年）など。０７年脚本家の橋田壽賀子さんによる「第１５回橋田賞」の新人賞を史上最年少の１３歳で受賞。身長１４９センチ。血液型ＡＢ。

　◆母べえ　太平洋戦争直前の１９４０年の東京。野上家のつましく幸せな暮らしは、独文学者の父親が治安維持法違反で逮捕され一変。激動の時代を母は２人の娘と懸命に生き抜く。原作は黒澤明監督の現場でスクリプター（記録係）を務めた野上照代さんのノンフィクション小説「父へのレクイエム」。

参照元：スポーツ報知