伊勢谷友介、映像に命がけ…ＮＨＫドラマで「白洲次郎」役

　ＮＨＫドラマ「白洲次郎」（全３回、第１回２８日放送）に主演した俳優の伊勢谷友介（３２）がスポーツ報知のインタビューに応じた。白洲は終戦直後に吉田茂首相の側近としてＧＨＱと渡り合った人物で、伊勢谷は演じることを切望していたという。１９９８年の俳優デビューから１２年目でテレビドラマ初出演。「映像に命をかけている」と言い切る伊勢谷が、初めてのスポーツ紙ロングインタビューで今作にかける思いを語った。

　伊勢谷は高校時代、ファッションデザイナーにあこがれていたという。東京芸大に入学し「服ではなくファインアート（造形美術）ばっかりつくっていました。ずっと迷っていて、自分が最も心を動かされるものを考えたら、映画でした」。

　影響を受けたのは「ドラキュラ」で米アカデミー賞の衣装デザイン賞を獲得した石岡瑛子さんだった。

　「衣装ってすごい、と。でも（映画では）監督の方がエゴが出せると思いました。芸大生ってエゴが強いので（笑い）。モデルをやりながら、お金の流れや照明など映画を勉強するためには俳優がいいと思ったんです」

　９８年に映画「ワンダフルライフ」（是枝裕和監督）でデビュー。オーディションで監督に「スタッフでいいから現場においてください」と頼み込んだ。「監督はそこが気になったらしくて。アートとして映像を撮る是枝監督との出会いが大きく、俳優として今に至ります」以降、仕事は映画に絞り、テレビドラマは一本もなかった。

　「連続ドラマでは監督がひとりではなく、視聴率に合わせて脚本が変わる場合もあります。そこがのみ込めなかった。映像に命をかけています。納得いかないものに出て、自分を裏切りたくない」

　その伊勢谷が初めてドラマ出演を決めた。白洲次郎（１９０２～８５年）は「戦争に負けただけで奴隷になったわけではない」との姿勢を貫いた。白洲は英語でＧＨＱと激しくやり合い「従順ならざる唯一の日本人」と言われた。身長１８５センチの美男子でもある。

　「自分が正しいと思うことを全力で突き進む。３０歳になる前に（白洲の）本を読み、あこがれと共感がありました。次郎さん役を切望していましたが、おこがましい気持ちもあります。何よりカッコいいのがプレッシャー（笑い）」

　偉大な人物でありながら、白洲のドラマ化は初めて。遺族が「伊勢谷なら」と快諾し、大きく動いた。妻・正子役の中谷美紀や原田芳雄、岸部一徳と実力派が共演。父親役の奥田瑛二に「伊勢谷だから、これだけの俳優が集まった」と言われた。「その言葉を糧に、物おじすることなくできました」伊勢谷も英語は堪能だ。プライベートで数十か国を旅する中で身につけた。

　「旅は自分にグローバリズムを生んでくれた大切な時間。アメリカにオバマ大統領が誕生して、僕はすごく希望を持った。日本にはそういう人がいない」と嘆く。

　昨秋、自ら行動を起こした。環境保護をテーマに廃材を家具に再生させる「リバース・プロジェクト」を立ち上げた。劇中の白洲も疎開先の田舎で鶏舎を住居に建て替え、農業を始めたこともあった。

　「地方を発展させることは今、必要なこと。次郎さんの先見性に共感します。僕も自分で家をつくることや自給自足にあこがれ、本を読んだりしていました。ゆくゆくは自分のプロジェクトを田舎でやって、新しい人間の生活を提案したい。その試行錯誤をしています」

　掲げる理想と思い切った行動力は、白洲次郎とだぶって見えた。

　◆伊勢谷　友介（いせや・ゆうすけ）１９７６年５月２９日、東京都生まれ。３２歳。東京芸大在学中にモデルを始め、９８年「ワンダフルライフ」で俳優デビュー。主な出演作は「ＤＩＳＴＡＮＣＥ」「雪に願うこと」「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」など。「ブラインドネス」は昨年のカンヌ国際映画祭で開幕上映された。血液型Ａ。

参照元：スポーツ報知