勘三郎「江戸を感じてほしい」…「やじきた道中 てれすこ」で４６年ぶり映画主演

１０日公開になる映画「やじきた道中　てれすこ」（平山秀幸監督）に主演した歌舞伎俳優・中村勘三郎（５２）がスポーツ報知のインタビューに応じた。映画主演は勘九郎時代、６歳のときの「アッちゃんのベビーギャング」（６１年）以来、実に４６年ぶり。平山監督、柄本明（５９）らと約８年越しで完成させた。ディティールにも徹底してこだわり「時代に逆行している作品。江戸を感じてもらいたい」と、挑戦する姿勢は歌舞伎だけにとどまらない。

　勘三郎が４６年ぶりに主演した映画は、ご存じ、弥次喜多もの。８年ほど前、共演の柄本明、平山秀幸監督と下北沢で酒を酌み交わしている時に飛び出した話題を、じっくり温めて実現にこぎつけた。

　勘三郎演じる弥次さんと、柄本演じる喜多さんが、遊郭を足抜けしたお喜乃（小泉今日子）とともに、東海道の珍道中を落語のネタも織り交ぜて表現した。勘三郎は「『幕末太陽伝』（５７年、川島雄三監督）が、僕が見た邦画の中でベスト３に入る作品。追いつけ追い越せ『幕末太陽伝』でね」と説明した。

　生粋の江戸っ子らしく「とにかく“江戸”を感じてほしかった」と勘三郎。まげは「細く短いものに」とリクエスト。「その時代の普通のまげだよ。ようかんのようなチョンマゲなんかあり得ない。リアルにした」昨年１１月のクランクアップの際には、大井川を渡る場面の撮影で人足の肩車で渡る予定だったが、柄本の提案で極寒の川を２人で渡ることに。「俺たちが言い出したことだからね」と苦笑いしながらも楽しかった撮影を振り返った。

　現場は「スローライフのように仕事しているけれど、遊びながらできるような感覚だった。本当にいいチームだった」。久々の映画主演で「映画をさらにやってみたくなった。（１年が）１６か月くらい欲しいね」という。撮影中では、あまりにも穏やかな表情に好江夫人が驚くほどリラックスしていたという。

　ハリウッド大作や人気ドラマの映画化など強烈なメッセージはないが、不思議に心が温まる。「（映画を見た）大竹しのぶが『私も、弥次さん、喜多さんと一緒に江戸を旅したい』と言ってくれた。『やさしい人ばかり出ている、この中に入りたい』ってね。うれしいよね」と喜ぶ勘三郎。そのためにも続編を作りたい。「温泉につかっているようなやさしい映画。何十年後かに見た時に飽きられない自信はある。奇をてらってないからね。でも、柄本さんが言うように『この映画は（観客が）入ってくれないと困る』。時代に逆行している作品で、沢尻さんのように『別に…』という作品なんだけど、こんなのがはやるといい世の中になると思う」江戸時代を感じさせるハートフルな作品が観客にどう受け止められるかを楽しみにしている。

　◆てれすこ　古典落語の演目のひとつ。世にも珍しい魚が網に掛かったが名前が分からない。そこで代官が名前が分かる者にほうびを取らすとしたところ、ある男が「これはてれすこという魚です」と申し出る…。１９６４年に亡くなった３代目・三遊亭金馬が得意としていた。

参照元：スポーツ報知