木村大作監督が日本一周ＰＲ…映画「劔岳 点の記」

邦画の名カメラマン木村大作氏が、６９歳で初メガホンを執った「劔岳　点の記」（６月２０日公開）で監督自ら、日本一周の長期単独キャンペーンを敢行することになった。映画界初の試みのために購入した自家用車に「劔岳」のプリントを積み込み、４７都道府県すべてを回って上映や講演を行う。全走行距離は２万キロ。地球半周にも相当する１人の長旅は２７日、剣岳のある富山県からスタートする。

　山にこもっての２００日間の撮影、山を扱う作品にもかかわらず空撮もＣＧも使用しないなど製作過程が異例なら、宣伝も型破りだ。「劔岳」（新田次郎原作）は明治初期、未踏とされた劔岳山頂に三角点を埋設する測量官を描く。浅野忠信、香川照之、松田龍平、宮崎あおいらが出演している。

　公開は半年後だが木村監督は全開。日本一周の企画も自らのアイデアだ。「監督はこれが最初で最後。この１本で企画、撮影、宣伝も責任を持ちたい。いまはネットの時代とか言うけれど、覚悟を持って津々浦々、実際に行ってこそ全国の人々に伝わるんじゃないか」。

　昨年９月に二百数十万円するマツダ、プレマシーを自腹で購入。「いつもは黒だけど今回は目立つよう赤。お金はないけどローン嫌いだから現金で払った」という。走行中の宣伝効果も考え、劔岳専用車にラッピング。今月２７日に富山で初試写を行い、２８日が出陣式。４月下旬に新潟にゴールする予定。走行距離は地球半周の約２万キロにも及ぶ。

　寒さに加え６９歳という年齢も考え、製作・配給の東映はスタッフ帯同案を伝えたが木村監督の答えはＮＯ。「１人でコツコツ回るから意味がある」と譲らない。２０年間、健康診断受けたことなし、週１度のレバニラ定食以外は野菜を食べない、愛煙家と不健康な生活を送っており健康面が心配されるが「この年。気を付けても逝くときは逝くよ」という決意だ。

　「全国ビジネスホテル本も買った」と宿はその日の気分で決めるという。過酷だった撮影を終え、映画は１２月中旬に完成。すでに約３００人の関係者が観賞しており、評判は上々だ。全国を回る際、スクリーンはすべてシネコンを使用する。

　映画は立ちはだかる山の厳しさ、自然の美しさが映し出される一方で、頂を目指す男たちの家族のドラマが描かれる。「私小説的な映画。１人でも多く見てほしいけど、自分が大もうけしたい気持ちなんてないよ」。あえて遠回りで不便な方法で生涯１本の作品を仕上げた木村監督は、いまの映画界に「一石投じる」思いを募らせている。

　◆木村　大作（きむら・だいさく）１９３９年７月１３日、東京・神田生まれ。６９歳。５８年東宝に映画撮影助手で入社。７３年、伴淳三郎主演「野獣狩り」で撮影監督デビュー。主な作品に「八甲田山」「鉄道員（ぽっぽや）」など。日本アカデミー賞最優秀撮影賞の受賞多数。

　◆４月下旬まで　○…日本一周の旅は２７日に富山市内で始まり、１月は石川（２８日）、福井（２９日）、滋賀（３０日）、岐阜（３１日）を移動。２月に入って愛知、三重、静岡を訪れる。２月下旬から九州、中国、四国を回り、４月に入ってから関東、東北、北海道の順に進み、ゴールは新潟。４月下旬に到着する予定だという。試写の観賞希望は順次、東映ＨＰ上で案内、募集される。

参照元：スポーツ報知