トウキョウソナタ“銀メダル”…カンヌ国際映画会

◆第６１回カンヌ国際映画会　香川照之（４２）、小泉今日子（４２）が共演した黒沢清監督（５２）の映画「トウキョウソナタ」（秋公開）が２５日（現地時間２４日）、「ある視点」部門の大賞に次ぐ２番目の「審査員賞」を受賞した。同部門での日本作品の受賞は初。黒沢監督は２００１年の「回路」で「国際批評家連盟賞」に選ばれて以来のカンヌでの栄冠となった。

　大賞こそ逃したが、全２０作中、堂々の“銀メダル”。邦画では初めてだ。黒沢監督は「驚きました。僕たちが家庭の中で抱えている小さな問題は、世界の問題でもあったようです。受賞の喜びを仲間たちと分かち合いたい」と語った。

　監督は東京から実家の神戸に向かう新幹線の中、プロデューサーのメールで受賞を知った。すぐに報告したのは病床の妻だった。今作の製作にかかわった夫人は１０日に軽い脳こうそくで入院。監督は渡仏を中止しようと思ったが、夫人の強い勧めで日本をたった。受賞は何よりの“良薬”となり、週明けにも退院予定という。

　香川も「朗報を待ってました。監督の奥様に少しでも励みになり、勇気づけることを心から望んでいます。カンヌ、ありがとう」。カンヌの赤じゅうたんを初めて踏んだ小泉は「思わぬご褒美に身が引き締まる思い。うれしい。黒沢監督バンザイ！」とコメントした。

　監督が家族に迫った同作は、公式上映でも評判が良く「正確で完ぺきなショット。キャストたちはすばらしい演技を見せた」（スクリーン誌）など絶賛。海外プレスの取材も殺到し、監督は５０媒体の取材に応じた。

　仏公開を始め、英国、台湾も決定。この受賞によって今後さらに増える見込み。監督、香川、小泉らは凱旋上映となる６月４日の完成披露試写で壇上から改めて喜びを語る。なおコンペ作の最高賞パルムドールは２６日未明（現地時間２５日）に発表される。

　◆黒沢　清（くろさわ・きよし）１９５５年７月１９日、兵庫県生まれ。５２歳。「しがらみ学園」で８０年度ぴあフィルムフェスティバル入賞。８３年「神田川淫乱戦争」で監督デビュー。９７年「ＣＵＲＥ」（役所広司主演）で世界的な評価を得る。カンヌは９９年「カリスマ」（監督週間）、０１年「回路」（ある視点）、０３年「アカルイミライ」（コンペ）に続き４度目。ベルリン、ベネチアの世界３大映画祭すべてに出品経験がある。

　◆「ある視点」部門とは？　コンペとは別部門で、芸術性の強い作品が多く、１９７８年の設立以来、邦画での同賞受賞は初。コンペ部門とは異なる審査員５人が担当する。例年の受賞は３作品だが、“粒ぞろい”の今年は５作品に与えられた。大賞はカザフスタンのセルゲイ・ドボルツェボイ監督「トゥルパン」だった。

参照元：スポーツ報知