中村獅童、役者魂貫く…父死去も主演舞台専念、最期見とれず

歌舞伎俳優・中村獅童さん（３６）の父・小川三喜雄さんが１１日午前４時５５分に、胃がんのため、都内の自宅で亡くなっていたことが１５日、分かった。同日、獅童さんの所属事務所が明らかにした。７９歳だった。獅童さんは主演舞台「黒部の太陽」（大阪・梅田芸術劇場、２６日まで）に出演中で、最期はみとることができなかったが、休演することなく気丈に舞台を務め、役者魂を見せた。１６日は舞台の休演日で、喪主として通夜を執り行う。

　最愛の肉親が亡くなっていたというショッキングな出来事をみじんも感じさせずに、中村獅童さんは堂々と舞台を務めあげた。大阪・茶屋町の梅田芸術劇場で主演舞台「黒部の太陽」。１１日早朝に父親・三喜雄さん死去。悲報に接しても、変わることなく、魂を込めて石原裕次郎さんを演じていた。

　獅童さんの父親・小川三喜雄さんは昨年末から体調を崩し、都内の病院に入院。胃がんと診断され、以後、入退院を繰り返した。獅童さんが女優・竹内結子さんとの約１年５か月にわたる長期の離婚騒動を経て離婚が成立したのは今年２月末。闘病中の父親の容体も一進一退を繰り返し、獅童さんにとってはプライベートで心労が重なる日々だった。

　獅童さんは舞台のため大阪入りする９月末まで実家に何度となく訪れ、闘病中の父親を懸命の看病。後ろ髪を引かれる思いで、同月３０日に大阪入りした。その際に獅童さんは関係者に対して「役者として、親の死に目に立ち会えないことは覚悟している」と話しており、覚悟をもっていたことをうかがわせた。以後、舞台出演の合間に実家に電話をかけ、容体を気遣っていた。ただ、そんな状況を周囲に悟られないように、何事もなかったかのように舞台を務めていた。

　三喜雄さんは３代目・中村時蔵の三男として生まれ、初代・中村獅童を名乗り歌舞伎の舞台を踏んだが、若くして廃業。東映プロデューサーに転身。その後、小川企画を立ち上げ、プロデューサーとして、映画、舞台と弟・萬屋錦之介をサポート。以後は、歌舞伎俳優を志した長男・獅童さんを陰から支え続けた。

　この日も、獅童さんは昼夜公演で奮闘。ラストシーンで４０トンの実際の水を浴びながら、ショックを感じさせない動きを見せた。１６日は公演中、唯一の休演日。当初は上京し、映画「ＩＣＨＩ」のプレミアで舞台あいさつを行う予定だったが急きょキャンセル。通夜で喪主を務め、通夜終了後に心境を語る予定。１７日には告別式を控えるが、大阪へとんぼ返りして公演に備えるという。何があっても舞台を休んではいけない―。父親から受け継いだ、“役者の心得”を守りながら、涙をこらえた。

参照元：スポーツ報知