中井貴一、“父親”市川崑監督に捧げるたばこ

１３日に肺炎のため亡くなった映画監督の市川崑さん（享年９２歳）の葬儀・告別式が１５日、都内の教会でしめやかに営まれた。愛煙家だった巨匠とのお別れに、ひつぎには「ビルマの竪琴（たてごと）」などに出演した俳優・中井貴一（４６）が手向けたたばこや代表作「犬神家の一族」などの台本が納められた。参列者は親族のみの密葬。駆けつけた市川組の撮影スタッフなど関係者を含む約３０人で、天国への旅立ちを見送った。

　光と影の映像美にこだわった市川監督らしい最期だった。午後２時３５分、出棺。穏やかな陽光に照らされた霊きゅう車の影は、教会近くの自宅の前を通り、都内の斎場へ。親族約１０人と親しい撮影スタッフ関係者約２０人が、涙を浮かべながら、静かに手を合わせた。

　“孝行息子”は１４日夜に駆けつけた。関係者によると、市川作品の常連だった中井は、東京・渋谷のパルコ劇場に出演中の舞台「二人の約束」の合間を縫って、「父であり師匠」と慕っていた監督の眠る枕元に。チェーンスモーカーだった巨匠が愛した「キャメル」のたばこ１カートンを供えたという。

　「たくさんあると、監督も煙たいから」（前出関係者）とこの日、ひつぎの中には、中井の寄せたキャメルが１箱。ほかに黒澤明、木下恵介、小林正樹と市川監督の４人の名匠で結成された「四騎の会」脚色の「どら平太」と、最後に撮影したリメーク版「犬神家の一族」（０６年公開）の台本など、ゆかりの品々が納められた。

　愛する家族の思いも込められた。遺影の代わりには、長女が幼少時代に描いたという、名監督の若かりしころの顔。黄色い額に入れられた絵は、自宅の仕事場に掛けられていたもので、生涯一（いち）監督の創作意欲をかき立てていたという。

　東宝関係者によると、お別れの会は３月以降、東宝スタジオ（東京・世田谷区）で行われる予定。市川監督が長年にわたり心血を注いだ“ホームグラウンド”で、映画を愛するすべての人々が、別れを惜しむ。

　◆犬神家の一族１８日追悼放送　○…市川監督の遺作となった「犬神家の一族」（０６年）が１８日午後９時からＴＢＳで放送されることが決まった。同作は市川監督が自身の代表作を、石坂浩二（６６）を再度主演に起用して３０年ぶりにリメークしたことで話題になった。ＮＨＫ教育では１７日午後１１時から、９９年に放送された「映像美の巨匠　市川崑」を再放送。吉永小百合（６２）らが同監督の魅力を語る。また、ＢＳ２では、３月１０～１３日午後９時から衛星映画劇場「追悼　市川崑監督特集」を放送する。

参照元：スポーツ報知